韓国
第3節 韓ドラの嵐

フッ…冬ソナを最後まで見てしまった…

※ 少々ネタばれ気味の内容なので、これからドラマを見ようと思っている方で事前に余計な知識を得たくない方は読まない方が無難。もっとも、さして意外性のある筋立てでもないのだが…。

さあ、皆さん、いよいよ笑って戴く時がやってまいりました。地上波放送「冬のソナタ」、ついに最終回まで見てしまった…。と、言っても、放送を忘れていたり、出先で見られなかった事もあったため、全部欠かさず見ていた訳ではないが。

見逃した分を、KBSのサイト上の台本を自動翻訳しながら、字幕なし無料動画で見た事があったが、台本と映像の各シーンの順番は違うわ、翻訳の日本語は不可思議だわ、なかなかストレスの溜まる鑑賞方法であった。あまりお勧めはしないが、「似ているようで違う韓国語と日本語」を実感するには極めて実践的な方法ではある。

さて、世間をあれほど騒がせた人気ドラマだが、色々とドラマ的ご都合主義が日本のドラマ以上に際立っていて、物事の論理性が何よりも気になる筆者としては、今ひとつ感情移入できなかったのが実際のところである。なんと言うか、筋立てが幼稚で先が読め過ぎてしまうのもねぇ…。

物語が論理的に破綻していたのは、放送時間の関係で細々と場面をカットしていた事が理由の1つであるらしい。これが「冬ソナの謎」として、ファンの間で熱く論じられていたとかいないとか。が、それ以前にこんなんあり?と首を傾げたくなるような設定も多々あった。

物語は主人公の高校時代と、その10年後の話で構成されている。高校時代の初恋の相手(ぺ様)が交通事故で亡くなり、彼女はその10年後、幼馴染の優男と婚約する事になるのだが、登場人物の言葉の端々から、彼らは10年間、恋人として(?)付き合ってきた事がわかる。つまり、交通事故の直後から、という事か???なんつ~尻軽女???しかし、物語の進行に際して、彼女にそのような尻軽さは認められない。その上、高校生当時、彼らは幼馴染として仲が良かったものの、状況は完全に優男君の片思い。彼女の方は「彼でもないのに手なんか繋げないわ!」と突っぱねる場面があり、まるで彼の事を男として見ちゃぁいなかったのである。う~~~~む。しかし、優男君の嫉妬や、彼の家族の横槍が絡んでこないと「話」にならない。人間関係をぐちゃぐちゃにするためだけにこしらえた、実に安易過ぎる設定だ。

さあ、2番目の謎へ行こう。

主人公の仕事はインテリアデザイナーか何かで、ドラマの進行中、スキーリゾート施設の改装工事をしていたのだが、何故かシーズン真っ盛りの時期に行われていた。通常なら、オフシーズンの、しかも作業のし易い雪のない時期に行われるものだと思うのだが。が、この不自然な状況設定の理由は簡単である。ドラマのテーマの1つは「冬」である。美しい雪景色は必須である。その上、吹雪で閉じ込められるなど、(安易に)ドラマが盛り上がる(と思われている)状況を作り易い。現実との整合性など、実にどうでも良いのである。

さて、面白いのは主人公の親達の人間関係。女性主人公の父(A)、優男君の父(B)、そして主人公の初恋の相手とそっくりな男(ぺ様)の母親(C)は高校時代、ドリカム状態。BはCが好き、CはAが好き、AはCが好きという訳でもない、という不毛な状況であったが、A、Bはそれぞれ別の女性と結婚し、Cは1人、姿を消す。そして密かに未婚の母となっていた。

さぁ!ぺ様の父親は誰!

ともすれば、恋人同士である、AとCの子供達は兄妹なのか!!!と、なんとなぁくお膳立て整いました、といったチープな筋立てである。

10年後、Aは病死しており、真相を知るのはCのみ。久し振りに再会したBはCに訊ねる

「あの子の父親は誰だ?私の子か?」
 え~~~~!!!身に覚えがあるという事は、BさんもCさんも二股かけまくりじゃないですか!しかも、彼らの子供達は大体同い年だから、あまり時間差もなかった事になる。…何処が純愛ドラマなんだ。

【図解】
A(死亡)—母   B—母   C—(A又はB!?)
     |     |      |
  女主人公-婚約-幼馴染(優男)  ぺ様
     |           |
     —–優男を差し置いて——
      恋人同士だが兄妹かもしれない

さて、最後の謎は「勝手に遊びまわってばかりの理事」。

ぺ様の役柄は設計事務所の理事なのだが、失恋したから(!)僕はアメリカへ帰るよといい、一旦会社を辞めた(?)ものの、いつの間にか舞い戻って平然と理事の椅子についていたり、部下に連絡も取らず、思い立ったら吉日とばかりに「自分探しの旅」にフラフラと出掛け、「全然連絡が取れなくて困りましたよ」と部下に言われる場面は枚挙に暇がなかったり。こんな事が会社を背負って立つ人間として許されるのだろうか???しかし、ドラマの進行中、部下の信頼を失ったような場面は一向に見当たらなかった。ドラマの最初の方で、彼は自分のやり方をぐいぐい押し付ける鬼理事、というような会話があったものの、ぺ様は始終エヘラエヘラしていて、実際そんな印象は全くなかったしなァ。

細かい事は気にするな、と言われそうだが、現実に即した違和感の少ない場面設定の中にあってこそ、文句を言わずにドラマを楽しめるというものである。なにしろ原作がアメコミという訳ではないのだから。しかし、そういった細かい事を気にしないでいられる鈍感な(おおらかな)感性を持ち合わせていた方が、世の中楽しい事が多くなるのだろうか。きっとそうなんだろうな。我ながら我が身が不憫である。