ドイツ

第1節 ドイツでの初仕事

ドイツで韓国語

ドイツでの2番目の訪問地、小さな城塞都市インゴルシュタットで。今回の仕事場の1つである公民館のような小さな劇場の前でウロウロしていたら、アジア系の女性に声をかけられた。ドイツ語だったのか英語だったのかはっきりわからなかったが、「韓国人ですか」と訊かれたようだった。うわぁ、アタシってば、ドイツに来てまで韓国人に間違われるか???

インゴルシュタットはドナウ川のほとりの美しい小さな街であるが、わざわざ観光で訪れるにはあまりにも地味な場所だ。しかもこの寒い時期にアジア人観光客がいる訳もない。アジア人が街を歩いているだけで注目を集めてしまうのだ。彼女がアジア人らしき人物を見て、ひょっとして同胞かも、と期待しても無理はない。その上、筆者は韓国で買った帽子と韓国人眼鏡とを装着していた。

さて、いくらドイツ語より韓国語の方が幾分マシに扱えるからと言って、まさかドイツにいる間に韓国語を使う機会が訪れようとは思ってもいなかった。頭の中は既にドイツ語・英語モードでいっぱいいっぱい、韓国語は取り敢えず蚊帳の外に放り出されていた。彼女の問いに対して咄嗟に出てきたのは…

Nein(独語)、チョヌン イルボンサラミエヨ(韓国語)。

(いいえ、私は日本人です)

何人だよ、お前は…。

驚いた事に、これに対する彼女の答えは

「え~~~~!何で韓国語話せるんですかァ!?(日本語)」

ぬわんと、彼女、日本語ペラペラだったのである。

「うわぁ~~~、何で日本語話せるんですかァ!?(日本語)」

これを韓国語で言えたら完璧だったが、スマぬ、韓国語モードになるにはあまりにドイツ語シャワーを浴び過ぎていた…。

彼女はこの街に住むドイツ人の彼と散歩中だった。まもなくニュージーランドで式を挙げる予定だという。何処で知り合ったの?と訊くと、彼の方が韓国にいた事があるのだという。韓国語はわかるの?と彼の方に訊くと、「チョム」と韓国語で答えた。

して、ここに日・独・英・韓4か国語で会話を繰り広げる奇妙な集団が一時現出した次第である。我々ってば、えせマルチリンガル。