ドイツ
第1節 ドイツでの初仕事

屈強なドイツ人

ドイツ人は男も女も屈強だとは聞いていたが、今回その事実を実に目の当たりにする。何しろ、寒さに強い(鈍感?)。民間療法では、風邪をひいた時は病人を素っ裸にして屋外に放り出すのだとか。マヂか?

筆者が訪れた11月は、筆者自身の事前調査によると、日本の真冬並みの気温との事。セーターや長袖の下着など、衣類は充分に準備した。ところがベルリンに到着した11月3日はまだまだ暖かく、薄めのコートでも大丈夫だった。あ~、こんな厚い上着、持ってこなくても良かったかな、と思ったのも束の間、寒さは日に日に厳しくなっていったのだ。毎朝ホテルの朝食のテーブルに、向こう3日間の予想気温をお知らせする紙片が置いてあったのだが、到着直後の10度前後の気温から確実に下がり続け、最低気温が零下を記録していた事も。時にみぞれ交じりの雨が降ったりした。晴れ間は殆どなく、どんよりと曇った日が続く。日照時間も短い。鬱々とした雰囲気。これがベルリンの冬なのだという。

なのにドイツ人と来たら、一皮剥くと、な、なんと、半袖を着ているのだ!

さて、1週間ほどベルリンに滞在した後、南へ向かう。ミュンヘンの近くのインゴルシュタット。こちらの方がアルプスなどの山地に近いため、むしろベルリンより寒いのだという。飛行機から見下ろすと、山がちな土地は確かに雪を被っている!

インゴルシュタットの中心部は、城壁に囲まれたこぢんまりとした地域。城壁の外側は森に囲まれ、散歩に最適な遊歩道が整備されている。暇な時間がたくさんあったので、散歩を楽しむべ、と何度か出掛けたが、いくら一生懸命歩いてもあまりに寒過ぎて全然体が温まらない。死にそうな気分になりながらホテルへとんぼ返りした事が何度あった事か。が、更に寒いこの土地に来たというのに、彼らの服装は更に軽装になっている。女の子は何故か皆へそ出しシャツ、ノースリーブ。ひ~、寒くないんですか?お腹冷えませんか??上着だって、なんか寒そうな薄手のコートか、風が通ってしまいそうな毛糸のジャケットなのだ。

また、外で寒風が吹きすさんでいるというのに、すぐに部屋の窓を開ける。ご、ごめん、寒いから窓閉めてイイ?と訊いたのは1度限りではない。

また、マジックショーの準備中、控え室では、着替えの途中で上半身裸、あるいはパンツ一丁でウロウロするドイツ人及びルクセンブルク人が多々見られた。温暖湿潤気候帯の国からやってきた筆者ナゾ、普通の冬服の上に更に厚手のコートを羽織って震えていたというのに…。

驚いた事に、彼らはアジア人的羞恥心もあまり持ち合わせていないらしい。何しろ控え室は全員一緒。男性がパンツ姿でウロウロするのはおろか、にわかに雇われたダンサーの女性も平気でパンスト一丁になって着替えていた。いちいちどっかへ隠れるのは面倒なので、そのうち筆者もある程度までは気にせずに着替えるようになったけれど。

そう言えば、ベルリンのショーで総合司会をしていた、筆者と同い年くらいの女性はしょっちゅう衣装を替えていたけど、それは全て舞台袖でやっていたものなァ。3階にある控え室を利用したのはメイクの時だけ。そりゃあ、彼女は幕間の度に出て行く訳で、殆ど毎回衣装を変えていたから(女性司会者って、何故こうなんでしょう?)、着替えの度に控え室に戻っている訳には行かないけれど、彼女が着替えの時に人目をはばかるって事はまるでなかったのだ。お見事!

更に驚いたのは、サウナやプールなどの総合施設へ連れて行って貰った時。初めは皆水着を着ていた。2手に分かれて筆者のいた方のグループが「ライトセラピー」とやらを受けて戻って来ると、オイルマッサージを受けていたもう1グループが、素っ裸でウロウロ歩いているのだ。初めは何かの間違いかと思った。

が。

オジさんもオバさんも、お兄さんもお姉さんも、裸になってその辺を転がっている。サウナに入る時は皆わざわざ素っ裸になる。水着のままでも問題ないと思うのだがなァ…?知らなかったけれど「ドイツのサウナ」は日本人旅行者が受けるカルチャーショックの1つとして至極有名な話らしい。

ドイツから帰った直後、仕事でよくドイツへ行くアジア人女性に会い、彼女の方から右のようなウェルネス施設の話をしだした。初めは驚いたけど、そのうち気にしなくなったわ、今じゃアタシもスッポンポンよ、と、彼女はゲラゲラ笑っていた。確かにあそこにいると、水着を着ている人の方がヘンに見えてくる。ドイツへ出掛ける回数が多くなると、筆者もそのうちそうなってしまうのだろうか?

屈強なドイツ人のスゴいところのもう1つは、鼻をかむ音である。その音たるや、凄まじい。まるですぐ横で猛獣が吼えているかのような音なのだ。西洋人は鼻をすするのを嫌い、すぐに鼻をかむ。それはカナダにいた時にカナダ人に指摘されて知ったのだけれど、まァ、カナダでもアメリカでも、その他のヨーロッパ諸国でも、こんなに素晴らしい音で鼻をかむ人達を見た事ありませんとも!