ドイツ
第1節 ドイツでの初仕事

ドイツの食事

誰ですか?ドイツ料理が不味いなどと言ったのは?はっきり言って今回、不味い物など1つも食べなかった。
まず、ホテルの朝食が素晴らしかった。ヨーロッパのホテルには朝食が含まれているのが普通で、大抵がいわゆるバイキング形式。好きなおかずを好きなだけ取ってきて食べる事ができる。

ベルリンに到着した翌日、ホテルの朝食会場に来て、目を見張った。その種類の豊富さたるや!!!なんと素晴らしい所に来てしまったのだろう!と、ドイツに降り立って早々、浮かれまくってしまった。多種多様のチーズ、ハム、ヨーグルト、フルーツ、コーンフレーク、パン、ジャム、サラダ、魚の酢漬けの数々、卵料理、ソーセージ、ベーコン。飲み物はコーヒー、紅茶(十数種類ものティーバッグが!)、多種多様のジュース。オレンジをその場で絞る生絞り器まで用意されていた!惜しむらくは野菜の種類が少ない事か。ここのホテルには1週間いたのだが、ま~、毎日違う物を食べてもまだまだ口にしていない物がいくつもあったほど。

この後に行ったインゴルシュタットのホテルは少し規模が小さかったため、食物の種類は少なかったが、何よりも嬉しかったのは、モッツァレラチーズとトマトのバジル添えが毎朝食べられた事!モッツァレラチーズなんぞ、日本で買ったらケチな一塊で500円位するのですぞ!トマトも高いし、バジルも自家栽培でもしていなければ新鮮なものはなかなか手に入らない。この黄金の組み合わせを毎朝口にできるとわ!必ず2、3切、皿に取ってきた事は言うまでもない。
数年前にユースホステルに泊まった時も、これほどではなかったが朝食はかなり充実していた。この時はドイツ名物ザウアークラウトもあったなァ。

野菜不足を補うため、外では主にサラダを食べたのだけれど、出てくる物がいちいちでかい事!!!サラダボウルくらいの巨大な皿に、野菜がわんさか盛られてくる。北米なんぞでよく供される、端がしなびた舌触りの悪い大き過ぎる葉っぱが不味そうに盛り付けられたものではなく、多種多様の野菜が食べ易い大きさに千切られ、その中にある具も、衣を付けて揚げたターキーだの海老団子だの、いちいち手が込んでいて、えらく美味。ドレッシングも色々選べるようだ。こんなに食えるだろうかと危ぶんだのも束の間、あまりの美味さに毎回ぺろりと平らげてしまった。

面白かったのは、これらのサラダに日本で言うところのほおずきが添えられていた事。これはホテルの朝食のフルーツコーナーにも置いてあった。まず初めにスーパーの生鮮食品売り場でほおずきを見かけ、エエ!まさかこいつを食べるんかいな、といぶかった。後日、外食時にサラダに付いてきたものを恐る恐る口に運んだら、甘酸っぱくて美味いのなんの。ついつい「lecker!(うめぇ!)」と叫んでしまった。

ほおずきといえば子供の頃、ほおずき作りの得意な親戚がいて、夏になると分けて貰っては中身を抜いて風船を作るという遊びをしていた。皮が破れないように気をつけながらよく揉みほぐし、爪楊枝で少しずつ中身を穿り出すのだけど、これが案外上手く行かず、風船を作るところまではなかなか到達しなかった。日本ではこれを遊びに使うんだ、という説明をドイツ人にしてみたのだけど、説明をしているうちに、一体何が面白くてこんな事をしていたのかわからなくなってきてしまった…。

正統派ドイツ料理というのもなかなか美味い。1度、ドイツ料理レストランでロールキャベツをご馳走になった。日本でよく見られる、包んだキャベツがスープに浮いているものではなく、豪快にキャベツ4分の一玉くらい使った物だ。ハンバーグ2個分くらいの多量の肉団子をキャベツで巻いて、オーブンでじっくり焼き上げた逸品。ソースも激ウマ。

ご馳走してくれた50代のオジさんは、家ではもっぱら主夫をしているそうで、料理も大の得意、これくらいのキャベツ料理ならお手の物。次の機会にはオジさんの手料理をご馳走してくれるそうだ。

インゴルシュタットではギリシャ・レストランがイベントのスポンサーになっていたため、夕食の殆どはこちらで食べた。ギリシャ料理と言えばカナダでもポピュラーだったが、サラダにフェタ・チーズさえ振り掛ければグリーク・サラダ、イカフライさえ散らせばカラマリという実にいい加減なもの、味は大味、盛り付けは大雑把であまり感心できる代物ではなかった。という訳であまり期待もしていなかったのだが、こちらと来たら、カナダのギリシャ料理ってありゃなんの嘘っぱちさとなじりたくなるほどの美味さ。肉をいろんな風にアレンジするのがギリシャ風らしく、ラムも豚肉も、上等な牛肉のように柔らかく調理してあり、調味料にも嫌味な癖がない。また、レストランからのサービスで毎回出てきた強いギリシャの蒸留酒「ウゾ」。こいつがまァ、五臓六腑に染み渡る美味さで、食欲増進にも一役買っていた。

この時は客人として滞在していたため、自分で食事にお金を払う事は殆どなかったのだが、小腹が空いた時にちょちょっとファストフード店で食物を手に入れた事も。ベルリンではとりわけトルコ人の多い地域にいたため、至る所にドネル・ケバブ屋があった。これは初めてドイツに行った時に既に発見済みで、その美味さに、以来病み付きになっていた。棒に巻きつけた巨大な肉片を回転させながら火であぶり、焼けた所から少しずつ削っていく。それをピタ・パンの中に野菜と共に放り込んでかぶりつく。美味い上に、肉も野菜もバランスよく食べられて健康的だ。レストランで食べたトルコ料理もなかなかイケた。

また、酢漬け魚がわりとポピュラーらしく、魚のサンドイッチや酢漬け魚のおかずの量り売りをやっている店もよく見かけた。これもまた激ウマなのだった。

また、酢漬け魚がわりとポピュラーらしく、魚のサンドイッチや酢漬け魚のおかずの量り売りをやっている店もよく見かけた。これもまた激ウマなのだった。

ベルリンに来たらコレを食べなきゃ、と薦められたのが、カリー・ブルスト。ソーセージにカレー粉を振り掛けただけなのだが、これまた美味かった。添えられているパンもふわふわで美味しい。コレを食べればJFKよろしく「Ich bin Berliner」と言っても良いそうだ。

菓子類はちょっと癖のある味の物が多い。が、北米の菓子のように甘過ぎて毎回ハズレという事はまずない。クリスマスが近いのでそれっぽいお菓子がたくさん売られていたのだが、ドライフルーツや木の実を多量に入れ、上に粉砂糖をかけたパウンドケーキ、ジンジャークッキーなど、非常に美味かった。

インゴルシュタットで知り合った女性が「ドイツで唇の形のチョコレートケーキ、食べた事ある?」と訊くので、ない、と言うと、じゃあ今度持ってきてあげる、と言って、筆者のためにわざわざ一包買ってきてくれた。帰国間際だったので日本に持って帰り、家族と一緒に食べた。一見、日本にもあるチョコパイのような形。が、中身は甘みを抑えた灰色っぽい生地で、やはり木の実やドライフルーツがたっぷり入っている。「オー、これは美味いね」と、筆者の両親もご満悦。引き合いに、カナダの激甘デザート(カナダ編参照)、ナナイモ・バーの話が出たのは余計だったけれど。