ドイツ

第3節 ドイツ就職活動の旅

ドイツ人のエーゴ その2

ドイツ人は英語の上手い人が多い。謙遜して、というか、ホントにそう思っているからなのか、「私の英語は酷いの!」とか言っている人も、実にフツーに英会話をこなす。また、流暢に話す人の殆どは、発音は綺麗だし文法的にもまずまず正確だ。

それにひきかえ、ラテン人なんか、発音の酷いのに加えて文法もかなりむちゃくちゃ。以前、「何時から始まるの?」とイタリア人に訊ねたら、「6 hour」と言う答えが返ってきた。ハテ?始まる時刻を訊いたつもりだったが、継続して何時間行われるのか、と訊いたのと勘違いされたか?と思いきや、どうやら相手は「6時」と答えたつもりらしい。イタリア語では時刻も時間も、英語のhourにあたる同じ単語を使うから、母語に従って勝手に英語の表現も変えてしまったらしい。もっとも、6時間なら「6 hours」になるはずだが。

ドイツ人に「英語を話しますか?」と訊ねて「少しだけ」と答えが返ってきたら、それはフツーに会話ができるという意味である。奥床しいのか、婉曲表現が好きなのか。どこが「ein bissen」もしくは「little bit」だよ?というくらい、何の苦もなく話すレベルだと思って良い。

逆に、ラテン人なんかは一言でも単語を知っていようものなら「日本語話せるよ!」などと大きく出る大雑把な人々である。発する言葉の内容が同じでもその意味するところは人種によって大きく異なることを頭に入れておかなければならない。

そんなことはともかく。

英語の上手いドイツ人と話していて、不思議なことは。彼らの英語のレベルにしては考えられないような初歩的な単語が時に完全に失念されていることがあるのだ。

例えば。

前にも書いたのだが、ドイツ人の姐さんに「ねえ、これ、英語でなんていうんだっけ!ほら、ここ、ここ」と、手の甲に突き出た骨の節を指しながら言われた。

「えっと、bone(骨)?」

「そうそう!」

どうも、近所の博物館にある恐竜の化石の話をしたかったらしい。その場合は「fossil (化石)」の方が適切だよ。因みにこの時彼女は「dinosoure(恐竜)」という単語も失念していた。ドイツ語では「ディノザウアー」と非常に発音の似た単語であるにもかかわらず。

今回もまた彼女に会ったのだが、バラの葉っぱを示して「茎についてる緑のやつ」と回りくどい言い方をする。どうも「leaf」という単語が出てこなかったらしい。

朝食にこれまたよく熟した美味そうなパイナップルを出してくれたので、「Wow! Pineapple!」と声を上げると、「ナニソレ?これはアナナスよ。」…姐さん、「アナナス」の英語名を知らないらしい…。

また、別のドイツ人にドイツ、オーストリア、スイス国境にまたがる湖に案内してもらった時。この湖からライン川が始まり、北へ抜けて北海まで辿り着く、と知人が説明をしてくれたのだが、ライン川の事を述べるとき、「ほら、単語が出てこない。なんていうんだっけ?水の流れのこと…」まさかよりによって「river(川)」という単語のことだとは思いもよらず、「canal(運河)?」と言ってみたのだが、「いやいや、canalに似てるんだけど違う」と言う。しばらく後に、筆者がふと「river」という単語を口にすると、「それそれ、さっき言いたかったのは!」

う~む。

われわれ日本人にとっては中学生レベルの単語。忘れたくても忘れられない超基本単語だし、余程英語の苦手な人でも知っていそうだ。ちなみに、彼は「pond(池)」という単語も思い出せなかった。

親切で几帳面なドイツ人は、一緒にレストランに行くと、メニューを逐一説明してくれようとする。膨大な食事のリストを1つ1つ説明するのは大変だが、聞く方も大変だ!勘で適当に当たりをつけて注文するから大丈夫なのに…。それはともかく。英語が上手で親切なドイツ人の知人、これは何の肉で、何のソースがかかって、と実に丁寧に教えてくれるのだが、しばしば頭を抱えて「英語の単語が出てこない!」と叫ぶ。「これは英語でなんていうんだっけ?」と頻繁に他のドイツ人に訊ねるのだが、その単語は

「chicken(鶏肉)」

「cucumber(きゅうり)」

「羊肉(彼は白いヤギの肉と言ったが)」

で、メニューのかなり下の方までいったところで、彼はハタと気づく。

「よく見たら英語でも書いてあるよ!」

お~い(^_^;)

ていうか、きゅうりくらいはドイツ語で言われてもわかるんですけど…。

ドイツ人、食物の名前に弱い???