クレジットカードの効用

海外旅行に出掛ける時に、クレジットカードを作る事を薦められた人は多いのではないだろうか。日本ではまだまだ使用できる所は限られているが欧米先進諸国では殆どの場所で利用可能だ。コンビニやスーパー、街中の小売店、医療機関や博物館、美術館での支払い、乗車券の購入にまで使える。多少の利子が付くものの、ATMでの現金引き出しも可能なので、筆者が海外に出掛ける時は、現金の両替は殆どしないし、T/Cも買わない。アジア諸国などのマイナーな通貨で、日本国内では現金の両替ができないものでも、現地に着いてからキャッシングできる。引き出し手数料のかからない所で必要分をこまめに引き出すようにすれば現金はさほど余らず、経済的だ。また、クレジットカードの為替レートは現金でのレートよりも良い事が多いので、管理に気を使ってカードを利用した方がお得で安全だ。

オンラインショッッピングでも、クレジットカードは大活躍だ。と言うか、カードがないと、北米ではネットショッピングはほぼ不可能なのだが。

カナダにいる時、オンラインで電車や飛行機のチケットを買ったのだが、コレがすこぶる簡単なのだ。電車の場合はこうだった。予約サイトで必要事項を記入して送信すると、メールで予約番号が送られてくる。出発当日駅へ出向き、その番号を告げるとその場で発券してくれる。飛行機の場合も実に簡単だった。簡単過ぎて不安になったほどだった。電車の場合と同様に予約を入れ、同時に自分の家の近所の旅行代理店をリストから選んで指定する。その代理店に電話で連絡を取り、チケットの受け取り方法の指示を仰ぐ。その後、代理店からはメールでElectric Ticketなるものが送られてきて、「それを印刷して当日空港に持って行きなさい」と言われた。「え?本当にそれだけで良いの?」と思わず訊き返してしまった。普通紙に普通に印刷したものをそのまま持ち込めば良いのだ。

筆者が不安になったのには、別の前振りが原因となっていた。日本にいる時も、実は同じサイトから航空券を買った事があったのだ。リストにあった日本の代理店は東京支店のみであり、そこに電話を入れたのだが、なんと「クレジットカードは来店してサインをしないと使っていただけない」と言う。遠方の方は銀行振り込みでお願いします、との事だった。まァ、セキュリティがしっかりしていると言えばそうなのだが、コレじゃあオンライン・ショッピングの意味ないじゃん。しかもチケットは宅配便で送られてきたため、たかが薄っぺらな紙切れを受け取るのに数百円も余分にかかってしまったのだ。

これはまた別の話だが、筆者のカードには何故か顔写真が付いている。海外ではこれは非常に珍しいようだ。カードをレジに差し出す度に、まじまじっと眺めて「写真が付いているなんて、面白いわね!」と言う店員の多い事。カード会社が「身分証明証代わりになる」と鳴り物入りで宣伝していたのだが、このように面白がられるだけで、これと言ってそれが役に立つ事はなかった。

が、ある時、急にパーソナルチェックを現金化する必要に迫られ、銀行から写真付きIDの提示を求められた。予め必要な事がわかっている時でもなければ、パスポートなど、そうそう迂闊に持ち歩くものでもない。殆ど窮地に陥りかけたのだが、ハタ、と思い当たったのは写真付きクレジットカードの事だ。「こんなのじゃダメかしら」と差し出したところ、「まァ!写真つきのカードなんてあるのね!ステキ!」と、例の如く感動され、筆者のカードはただ珍しいというだけの理由で銀行員全員の間を一巡した。珍しがられるだけで結局役に立たなかったという落ちになりそうだが、一応、これはIDとして認められた。「鳴り物入り」の効用は伊達ではなかったのだ。

色々と便利な反面、日本では起こり得ないような信じられないトラブルに巻き込まれた事もある。大分昔の事だが、今思い出しても実に腹立たしい。

一九九七年当時はまだオンライン・ショッピングがあまり一般的ではなかったので、筆者はKamloopsの代理店で航空券を手配して貰ったのだが、それを受け取りに行った時、筆者の担当のエージェントが休暇に出掛けてしまっていた。彼女のアシスタントが代りに渡してくれたのだが、数ヵ月後、実家から送られてきた銀行通帳のコピーの残高が異様に減っている事に気が付いた。原因を調べてみると、この航空券が二度も発券されていた事がわかった。休暇から帰った担当者が、筆者が既に航空券を受け取った事を知らされていなかったのか、もう一度同じ物を発券してしまったらしいのだ(て言うか、一度発券した事を何故忘れる?)。日本の代理店では有り得ない出来事だ。しかし、ここはカナダ。相手がカナダ人と思って日本の常識は捨てるしかない。

更に悪い事に。

普段はカードの明細を実家から転送して貰っており、逐一内容を確認していたのだが、この頃実家に同居していた痴呆老人によって郵便物が紛失する事がしばしば起こっており、その月の明細に限ってブラックホール入りしてしまっていた。従って、事件に気付いたのは既に引き落としが済んでしまってから。取り消し手続きも甚だ面倒になる。代理店や航空会社へ手続きのために連絡を取ったのだが、長距離なので電話代もバカにならない。その上代理店の担当者はついに居留守を使い始めた。明らかに君らのミスだというのに何故!日本の代理店では有り得ない!!!しかし、ここはカナダ…。

電話では埒が明かないので、Kamloopsに寄った際、カナダ人の知人を伴って代理店に直接乗り込んだ。筆者一人の時は始終作り笑顔で取り繕っていた彼女も、「お前がこの子の金を盗んだと、街中に言いふらしてやる」と知人にハッタリをかまされると、さすがに引きつった顔になった。日本だったら客側にこう言われる前に「信用問題」として自社側で相応に対処するものだと思うのだが。しかし、ここはカナダ…。

知人のお陰で何とか決着がついたが、帰国直前まで対応に追われ、エラい迷惑を被った。その上、電話代など諸経費まで先方が保証してくれる訳ではない。

このケースの場合、セキュリティ以前に、相手側が二重に請求している事に気付きもしないずさんな管理体制と、信用問題に鈍感過ぎるカナダ人気質に問題がありそうだ。カードによる瞬時決済の便利さを謳歌する反面、再びこんな事件が起こるのでは、という不安がない事もない。