ドイツ語圏の食生活

ドイツ語圏の食事は北米ほどには栄養が偏っておらず、不味いワケではないのだが、この辺の人々もやはり肉食中心民族である。滞在中は努めて野菜を摂るようにしているものの、なにしろ、一皿一皿が大きいので、肉やパスタ料理を1つ頼むとそれだけで量的には十分。ろくな付け合せもないのでサラダを別に取りたいところだが、こちらでサラダと言うと、それだけで食事になるくらいの立派なもの。とてもじゃないが両方は食べられない。

グラーツで、オーストリア名物ヴィーナーシュニッツェルを注文したら、とてつもなくデカいカツレツが大皿に3枚ほど乗ってきた。付け合せはフライドポテト。「奴らはジャガイモを野菜だと思っているんだよ」と同席した日本の方がおっしゃったのもあながち間違ってはいまい。

そういえば、先日アメリカ映画を見ていたら、親が子供に向かって確かにこんな台詞を喋っていた。

「ジャガイモは野菜なんだぞ。栄養があるんだ。しっかり食べなきゃ」

勘違いも大概にして欲しい…。

ジャガイモもひとくくりに野菜(vegetable)と呼ぶことはできるかもしれないが、成分的には殆ど炭水化物である。しかし、上記の場面ではおおよそ「緑黄色野菜」的に認識されているとしか思えなかった。

先にも述べたように、こちらのサラダは一皿がなかなか立派な大きさで、且つ、たんぱく質素材も含んでいて、内容的にはバランスが良い。加えて盛り付けもなかなか綺麗で、味も悪くはない。これらの点においては北米の不味そうなサラダと大きく水をあけている。問題は、一皿がとてつもなく大きく、その分お値段も張るということである。仕事が終わる度に毎晩仲間と出かけていったレストランでは、サラダに大小のサイズが記されていたので、勿論小さい方を頼んだのだが、「コレのどこが『小』なのだろう???」と激しく疑問を感じるほど大きかった。しかし、サラダをメインディッシュとして摂る分には問題ないので、ドイツ滞在中はひたすらメニューに「Salat」という単語を探していたものだった。

が、たまにはその土地の名物料理も食べてみたい。ちょうど筆者が出かけた時期は、ホワイトアスパラガスが旬だった。何故かドイツ語圏の人々は、わが国では缶詰でしか見られないホワイトアスパラを丁重に料理して食すのだ。これは旬の時期しかメニューに載らないので、なんとしても食べてみたかった。

が。

ドイツ人の友人に連れられてその目的を果たしに行ったのだが、極太アスパラ10本余りがやはり巨大な皿に盛られて出てきた。付け合せはまたしてもジャガイモだ。そして、緑黄色野菜らしきものは、プチトマト1個。青物を食わせろ、青物を…

さらに。

向かいに座った友人、「ホラ、バターもかけて」と、添えられてきた溶かしバターを筆者の皿のアスパラガスにどばっとぶっかけた。

ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!

そんなに油っこくしてどうするんですかっっ!!!!!

その「味付け」はワシにとっては殆ど意味不明です!!!!

他の知人とランチを食べた時、バイエルン名物の豚肉料理を勧められた。確かに美味かったのだが、やはり野菜がない。一応、ザウアークラウトが程よい量だけ別皿で付いてきたのでまだマシだったが、白っぽいキャベツでは彩りがイマイチだ。

別のメニューを頼んだ知人の皿を見ると、こちらはレタスとパプリカの炒め物が彩りよく添えられていた。しかし。彼はその野菜に一切手をつけなかったのだな。

なるほど。

肉食民族の彼らはそもそも野菜のつけ合わせなど必要がなく、たとえ添えられていても手をつけない人が大半なので、レストランの方でも出すのをやめてしまったのだな、きっと。

それぞれの国の外食産業に、何かしら国民性が見て取れるようで興味深くはある。そもそも、筆者には大きすぎる一皿も、彼らには当たり前の分量。ミュンヘンで毎晩仕事が終わるのはいつも11時近くだったのだが、ドイツ人たちはそれから食べに出かけるのだ。1人1人が巨大な一皿に巨大なビール(500ml)を注文し、でもって、ちょっと他所見をしている間にそれらをつるっと完食してしまうのだ。「ものスゴーお腹空いてたんでね」と、決して大柄ではないそのドイツ人はしれっと言ってのけていた。