Sprichst du Deutsch?

人によって差はあるものの、ドイツ人は割と英語が得意であるようだ。少なくとも平均的日本人よりはマシに操っている。大きな都市の商店、レストランではまず間違いなく通じるし、戦後生まれなら「自称」苦手な人だって意思疎通を図れるくらいのレベルではある。

街中では何気に英語のサインを見かけるし、結構生活の中に英語が入り込んでいる。ビートルズがレコードを売る時にわざわざドイツ語に訳した歌詞を用意してイヤイヤながらそれを歌ってみたというのに、オリジナルの英語バージョンの方がヒットしてしまったり、なんて過去もあったらしい。今やラジオから聞こえてくるのは殆どが英語のポップスだ。ドイツ語のポップスはまるでメジャーではないのだとか。確かに、ジャーマンポップスと言ったら「ジンギスカン※」「シュナッピー」(←ポップス?)くらいしか知らない。

驚いたのは、ドイツでは喋りがメインのショーでも、英語でやってしまえること。今回、ミュンヘンで行われたショーはこの夏に行われるマジックの国際コンテストへの出場を控えた人たちの練習の場でもあったのだが、世界各国から人々が集まる国際大会では共通言語は英語であるため、喋りがある場合、出場者の大半は英語で演技を行う。というワケで、観客がドイツ人なのにもかかわらず、出演者の何人かは練習のために英語で台詞を喋っていたのだ。喋る側はともかく、観客の方も何の問題もなくそれを理解し、ウケるところではきちんとウケていた。日本ではまず有り得ない状況である。

とまぁ、これほど英語に馴染んでいるドイツ人であるけれど、ドイツにやって来た外国人がドイツ語を少しでも学んでいるのはウレシイ事実であるようだ。

ある時道を尋ねようと、しかめ面したオバさんをつかまえて、「すみません…」とドイツ語で声をかけると、オバさん、途端にニコ~!と笑顔になり、全編ドイツ語+大げさな身振り手振りで丁寧に道案内してくれた。

また、筆者が初対面で「日本から来ました」とドイツ語で一言でも言おうものなら、

「Sprichst du Deutsch?」(ドイツ語話すの?)

と、実に嬉しそうに訊ねられてしまうのだ(こんなの、喋れるウチに入りませんてば…)。仕方なく、「Nein, leider nicht」(いいえ、残念ながら…)と、これまたドイツ語で答えると(ナンか矛盾してますか?)彼らは引き続き、エラく嬉しそうである。

オーストリアでも同様に、現地の知人とランチを食べに行った時、ウェイターに向かって「デュンケル・ビアはありますか?」とか「水をください」とか言っただけなのに、「君がドイツ語を話すなんて知らなかったよ!!!」と、またまたエラく嬉しそうに言われたものである(こんなの、喋れるウチに入りませんてば……(^_^;))。

筆者が喋った事と言えば、どんな会話帳にも載っていそうなごく基本的な必要最低限の内容でしかないというのに。外国人観光客というのは普通、それほどまでにドイツ語に疎い状態でドイツ語圏にやってくるのだろうか?

こんなこともあった。

ミュンヘンから電車で1時間ほどのところにあるヘレンキームゼー城に行った時。お城の庭のベンチに座っていると、老夫婦が隣に座ってもいい?と訊いてきた。筆者の知識外のドイツ語だったが、状況から何を言っているかは判断できる。どうぞ、どうぞ、と少し脇に寄ると、彼らは腰を下ろした。それからしばらくすると、目の前の噴水から水が吹き上がり始めた。老婦人が筆者の方を見て「綺麗ね」と言うので、「そうですね」と答えると、やはり嬉しそうに「ドイツ語わかるの?」と訊いてきた。「残念ですが…」と答えたものの、老夫婦は更にドイツ語で話しかけてきた。年配の方は英語が出来ないことが多い。

「どっからきたの?」

「日本からです」

「日本もきっと、この噴水みたいに綺麗だよね」

話題振りの上手い人だなぁ…。

最小限の語彙を駆使しながら、会話を続け、彼らがココへ来たのは3回目であり、彼らの住まいはドイツの西の方だということはわかった。必要に迫られているワケでもなく、長く話す必要があるワケでもなく、自分の知識の範囲内だけで会話を成立させればいいというこの状況で、その気楽さ故に「ドイツ語会話」を楽しんでいる自分を発見していた。

観光客として普通に旅行する分には必ずしもドイツ語を学んでいく必要はない。それに、ドイツ人の知人の殆どは英語を話す。それゆえ、ドイツに行く機会が多くても、結局初歩の段階から抜け出せず、いつまで経っても日常会話レベルにすら達しないのだが、こんな経験があると、うちょっとまともに勉強してみようか、という気にさせられる。ま、一切英語がわからない知人でも出来なければなかなか上達しないだろうけれど。

※「ギンギスカン」、オリジナルはドイツ語だったんですね!その名も「ジンギスカン」というグループによる似非アジアン気取りの衣装と踊りははっきり言って笑えます。ドイツの知人に、この映像が「ジャーマン・カルチャー」として語学番組で紹介されていた、と話したら、苦笑いしていた。

最近再結成したジンギスカンのCD

「ジンギスカン」の歌詞の日本語訳!!

ジンギスカンの曲「めざせモスクワ」を基にした「もすかうFLASH」も笑えるよ!