エア・カナダなんか…

二度目にカナダへ行った時、色々考えるところがあって、一年オープンのチケットを買う事にした。名古屋発着便の選択肢としては大韓航空とエア・カナダがあったのだが、カナダに着いてすぐ、Kamloopsに行く事になっていたので、カナダ国内を無料で接続してくれるエア・カナダの方を選んだ。エア・カナダの方が多少高かったものの、ちょうどKamloopsへのバスの往復料金分くらいだったので、決して損な選択ではなかった。

これより五年前にワーキング・ホリデーで行った時も、同じ都合でエア・カナダにしたのだが、この時、この航空会社、いきなりロスト・バゲージをやってくれた。

この時は非常に接続が悪く、バンクーバーで数時間待たなければならなかった。その上出発が遅れに遅れて一時間以上!当時海外旅行には不慣れだったので、不安が募る上、疲労も溜まってきた。ようやく出発案内が出た頃には、もうあたりは薄暗くなっていた。

カナダ国内便はマイクロバスより座席数の少ない小型プロペラ機なので、手荷物の持ち込みが制限される。巨大なバックパックを無理矢理手荷物にしていた筆者は、機内に乗り込む時、その荷物を預け入れるように指示された。仕方ないので防寒具や貴重品だけ取り出し、係に手渡した。

ところが。

降機地、Kamloopsに到着したら、慌しく預けさせられたこの荷物がいつまで経ってもレーンに出て来ない。どうも途中で着陸した別の飛行場で降ろしてしまったらしいのだ。チェックイン手続きを取っていないので、タグが付いておらず、間違え易い状況ではあったのだが、タグがないならないで、地上職員も機内の職員に確認してから降ろして欲しいものだ。少なくとも「日本の常識」ではそうするはずだろう。しかしこういういい加減なところがカナダ流なのだ。筆者は早くもカナダの現実に直面させられてしまった。

更に悪い事に、筆者は几帳面にもスーツケースに鍵をかけており、その鍵はなくなった荷物の中に入っていた。身の回りの物も着替えも何一つ取り出せず、手ぶらで到着したも同然。しかも、荷物が届いてからわかったのだが、貴重品を取り出す時に、誤って、編み上げたばかりの毛糸の帽子を落とし、気付かずにそのまま来てしまったようなのだ。そんなこんなで、長いフライトでほとほと疲れ果てた上、全く「とほほ」なカナダ到着第一日目を迎えたのであった。

こんな事件があったので、二度目に国内線を利用した時も「彼らは絶対何かやるに違いない」と、かなり警戒していた。手荷物は持ち込みができるようになるべく小さくし、迎えに来てくれる友人にも「あいつら、またなんかやるかもしれないから」と覚悟するよう言い含めておいた。彼女曰く、別の学生がホームステイしに来た時も荷物をなくされたそうである。が、乗り継ぎ時に別件でひと悶着あったものの(やっぱりナンカあるのだね)、幸いにしてその時はロスト・バゲージには遭わなかった。

が。

エア・カナダとの付き合いはまだ終わっていない。クリスマスに再びKamloopsを訪れ、バンクーバーへ戻るのに、オープンチケットの帰り便の一部を使う事にした。色々事情があって直前まで予定が確定できなかったので、この便の予約をしたのはフライトの前日だった。時期が時期なだけあって、予約しようと電話をかけたものの、「待ち時間は四十分」と、自動応答アナウンスがとんでもない事を言ってくる。初めは諦めてすぐに切ったものの、ホストマザーに言わせれば、それを待つのが「カナダの常識」なのだそうだ。皆が待つから、企業の方も改善する努力をしないのだな。何処かで聞いたような話だ。

そんなこんなで待つ事二十分、ようやく電話口に出た職員は、エラく無愛想だった。

「オープンチケットを持っているんだけど、日本に帰る便だけ後から予約できるかしら?」

「わからんから空港に行ってチケットを見せなさいよ」

おいおい、そんな事くらい電話で対応してください。この件については埒が明かないので、適当な日に予約を入れて、後で変更する事にした。

予約する段になるとこうだ。

「チケットに記載されているコードを言いな」

「何処に書いてあるの?どういうコード?数字?アルファベット?何文字?」

「わからん。とにかくコードがあるのよ。さっさと見つけなさいよ。でないと予約はできないからね。」

わからんって…。せめてどんな種類の文字の組み合わせか言ってくれよ。とにかく、券面にあるコードらしきものを手当たり次第に読み上げた。しかしどれもこれも違うようだった。職員は新しいコードを言う度に何処か別の場所へ調べに行くのだが、それにもいちいち時間がかかる。まとめて聞いてまとめて調べに行くという頭は働かないのだろうか?電話口で「四十分待ちなさい」と告げられた原因がわかった気がした。とにかく信じられないくらい手際が悪い。自分の名前から検索できないか訊いてみたが、「できない、コードを探しな」の一点張りだった。

最終的には「コード」なるものを探し当て、予約できたものの、この対応の悪さはなんだ?右の日本語訳は決して大袈裟ではない。口調はまさにこんな感じだったのだ。

そんなこんなで、翌日早朝、無事にバンクーバーまで飛ぶ事はできたのだが、いくら待っても自分の荷物が出てこない。待つ事三十分以上。しまいに別の便の荷物が出てきてしまった。オイオイ、またかよ…。仕方なく、クレームタグを持って係に訊ねに行った。なんと、この時は、Kamloopsで荷物を積みさえしなかったそうである。理由は「入りきらなかったから」。それならそれでしょうがないけどさ、飛び立つ時にその事はわかっているんだから、客室乗務員を通して知らせておいてくれよ…。仕方がない、ココはカナダなのだ…。それにしても、カナダ国内線四回利用したうちの半分でロスト・バゲージって、確率が高過ぎやしないだろうか。

まだある。もう一つ、日本へ帰る便が残っていた。行きは名古屋・バンクーバー直行便で来たのだが、不景気のあおりか冬季はこの便が運休となり、成田周りで帰らなければならなくなっていたのだ。この事は知っていたから良いのだが、なんと、成田に着いても同日乗り継ぎ便がないという!カナダ人のする仕事になんか、とことん信用を置けなくなっていたから、「ホントにないのか?」と、愛想の悪い電話口のおネエちゃんにとことん詰め寄る。「ないったらないのよ。」「ホテル代も出してくんないの?そっちの勝手でいきなり運休したんじゃん、それくらいやってよね」伊達で強気に出てやったら、おネエちゃんは何処やらへ訊きに行ったようだが、「悪いけど出ないわよ」と、全然悪気がなさそうに言われてしまった。それでもイマイチ信用できないので、後日、日本のエージェントに改めて確認をして貰ったのだが。

帰り便も帰り便で、客室乗務員は無茶苦茶愛想が悪い。日本の空港に降り立つと、到着客に向かって地上職員がにこやかにお辞儀を繰り返していたのだが、それが乗客の大部分にとっては大して意味も成さない行為にもかかわらず、あぁ、日本のサービス業よ、と、感慨を深くしてしまった。

また、飛行中、映画を三本流すというので、そんなに時間があるのかいな、と思ったら、一度目の食事中に、室内照明を点灯させたまま上映を始めてしまった。乗務員が通路を行き来するので見辛い事この上ない。また、二本目は、日本へ行く便だというのに日本語吹き替えがない。乗客は殆ど日本人なのだ。彼らはサービスというものがなんだかわかっているのだろうか?三本目は着陸一時間半前に上映開始、が、当然これが最後まで上映される訳もなく、しかも着陸三十分前にはヘッドホンが回収され、あとは映像だけが延々と流れていた。あの~、惰性でビデオ上映してるんですか?家に帰ってからわかったのだが、この映画は日本で公開直前のサスペンス物で、結構な話題作だったらしい。こういうものをこんな中途半端な見せ方されちゃあ、堪らない。

そんなこんなで、エア・カナダなんてもうこりごり、二度と利用してやるものか、と思うに至ってしまった。ただ一つ、マシだったのは、カナダでの二度目のロスト・バゲージは、その日のうちに届けられた事だ。夜中の十一時と、かなり遅い時間であったにもかかわらず。とある日本の航空会社でロスト・バゲージ(←個人的に確率高過ぎ?)にあった時、名古屋空港に荷物が届いたのは翌日夕方、しかもその日のうちには配達に出してくれず、手元に戻ったのは翌々日だったのだ。これは日本の宅配システムの問題なんだろうけれど。