韓国
第6節 釜山再び

軍隊でマジック

釜山でのマジックのイベントに参加中、久しぶりに会った韓国人マジシャンの知人の髪が短くなっていたのでそう言ったら、なんと今兵役の最中だと言う。だから髪を刈ったのか。それは大変だね、軍隊にいる間はマジックも出来ないし、と言うと、ぉよよよ、と泣き崩れる素振りをする。だから半ば同情しかけたのだが…

それにしても一体どうやって軍隊を抜け出してココへやってきたのかと訊ねると、イベント主催者から軍隊へゲストパフォーマーとしての招待状を送ってもらったのだという。ふ~む。それはいい息抜きになったね!

なお、ココまでの会話は筆者のいい加減な韓国語と彼の中途半端な英語によってなされているため、実際に正確に意味が伝わっているのかは怪しいものなのであった。

ところへ、日本語通訳さんから別の有名なマジシャンも近々兵役につくという話を訊いた。しかし彼の場合は軍隊でもマジックをやっていればいいのだとか。え?そうなの?まー、彼は韓国一有名なマジシャンだからソレもアリかと思ったのだが、イマイチ有名とは言い難い件の知人はどうなのだろう?さっきの落胆振りからすると、そういう話ではなさそうだったのだが、改めて通訳さんを介して話を訊くと、ヤハリ彼もマジックだけやっていればいいのだという。でも他の仕事もあるでしょう?と重ねて訊いたのだが、やはりマジックだけでいいのだという。

いいのか?韓国の軍隊?そんな甘っちょろいシゴトの兵隊さんがいて?

軍隊でマジックって、イマイチ想像がつかないのだが、要するに普段通り練習していればいいのか?ホカの芸能人、例えば歌手や俳優などにも似たような措置がとられるのだろうか?????

相変わらずナンダコリアな韓国なのである。

更に更に。

別の知り合いのマジシャンも兵役を終えたばかりだという話を訊いた。このところ筆者の知り合いのマジシャンがどんどん兵役に付いているらしい。10代後半からマジックを始めてのめりこんでいき、それゆえ大学をサボったりナゾしているうちに兵役もこなしそびれていたってトコロだろうか?しかしいよいよタイムリミットが近づいて、やむにやまれず軍隊行き。韓国でマジックがブームになったのはここ数年の話なので、時期的に言うとこれはあながち外れた類推でもなさそうだ。

で、その別のマジシャンの仕事はというと、コンピューターに明るいところを買われ、そういう類のデスクワークのみやっていたのだとか。しかも職場がウチから近いので、ウチから通っていたのだとか(兵役の代わりに指定された会社に通うというものらしい)。そんなことなら兵役免除にしちゃえよ、と思うのは筆者が韓国人ではないからだろうか?

しかも。

兵役の最中なのに、普段通りのロングランのワンマンショーをやったりしていたのだそうな。だもんでボーズアタマにもせずに、ファンキーな髪型のままだったのだとか。そういえば釜山からソウルへ行く電車の中のモニターで彼が出演しているCMを見た。

さて、イベントも終盤に差し掛かった頃、今から軍隊に帰らなきゃならないと言って兵役中の知人がお別れの挨拶に来てくれたのだが、彼は殊更悲しそうだった。好きなマジックができると言っても、やはり自宅にいるようには自由が利かないのだろう。別の知人に聞いたところによると、軍隊はゴハンが美味しくないんだそうな 。それに、もし彼女でもいたら滅多に会えないのも辛い所だろう。

この後ソウルで別のマジシャンに会ったのだが、韓国においては20代中頃の旬なマジシャンが多い中で、彼は幾分歳がいっていた。といっても30そこそこだが。そういえばアナタは兵役終わったの?と訊くと、とっくに終了していると言う。マジックのみならず、司会などエンターテイナーとしての実力もあり、このところぐんぐんメディアへの露出が増えている彼のこと、兵役で足止め食らっている他のヒトビトを出し抜いて一足飛びに大物に成り上がっていくのではないかな~。何事もタイミングが重要である。悲喜こもごも、韓国マジック事情なのであった。