暇潰しのはずが…

サテ、友人に裏切られて深く傷ついた筆者は、取り敢えず、気持ちを静めるために摂食と購買に走る。時にその場所は、数分前まで友人だった人と待ち合わせするはずだった、ソウル市内で最も賑やかなショッピング街の中。いずれの欲を満たすにも事欠かない。それでもなお気分がすぐれなかったので、誰かに会って鬱憤を晴らさねば、と思ったものの、しかし急に連絡して会える人も多くはない。前日に付き合ってくれた女の子が「ヒマだからいつでも連絡して」とは言っていたが、その子の話すハナシの内容に対してちょっと食傷気味であったため、これは避けたい選択。で、間違いなくつかまる無難な相手は前々日に会ったシゴトの依頼人なのであった。このヒトとその友人である韓国人がこの晩会うことになっていて、まーヒマだったらキミも連絡よこしなよ、と言われていたのだ。ところで、2人とも相当マニアなマジシャンである。それを失念していた筆者がそもそも愚かだった。

待ち合わせ場所は依頼人が泊まっているホテル。ロビーから出たところで手持ち無沙汰気味に筆者を待っていた彼は、携えているペットボトルでナニやら怪しい「素振り」をしている。うぅ。こんなところで…。しかしこれならまだ「なんとなく手持ち無沙汰なヒト」に見えなくもない。

さて、韓国人の友人を待つ間に、筆者が預かっていた彼の持ち物を返却する。一旦部屋に置いてくるよ、と言って戻ってきた彼、ナゼか手にスプーンを持っている。

ハテ?

「根っからのマジシャンではない」筆者は、よもやそれを「マジックの小道具」だとは思わず、「ナゼココにスプーンを?」と思っただけだった。

が。

ぁの…

ホテルのロビーで「念力を使ってるようなこと」をしないでください…。ハタメに見たら相当ヘンです…(O_O)

ここまではまだ「他人のふり」をすれば済むことであったのだが…。少々遅れてやってきた相棒の韓国人、両手に巨大なツールボックスを二つも抱えている。中には…開発中のマジックの道具やら、ドコゾで見つけてきた新ネタやらがぎっしり詰まっていたのだ!そう!久しぶりに出会った二人はココで溜まりに溜まったネタを披露し合いながら、マジックトークを炸裂させるつもりだったのだね!「根っからのマジシャンではない筆者」にとってはゴーモンに等しいお話だし、そもそも筆者自体がトンだお邪魔虫ではないか!!!!!

更に更に。そこへ新たな犠牲者が登場。韓国人マジシャンのガールフレンドである。完全なレイパーソンである彼女は、彼らの格好のカモである。一般客の反応を試すべく、いいように利用されている。マジック自体はフシギでしょうがなく、心の底から驚いて見てはいるようなのだが、それ以外の専門用語を使った話はモチロンちんぷんかんぷんのはず。その上マジシャン2人の会話はかなり流暢な英語。英文学専攻学生である彼女は英語が得意かと思いきや、ヒアリングもスピーキングも苦手のようで、途中、相当退屈しているのが見て取れた。ダンナにヘタなマジックを見せられ続けて、ついにマジックが大嫌いになる「マジシャンの妻」の未来図そのものである(^_^;)

イヤハヤ。

さて、「終電の時間もあるのでそろそろ帰るよ」と言うと、「イヤイヤ、僕が送っていくから大丈夫」と韓国人マジシャンが言う。「だっていつまで続くかわかんないし、帰るよ」と断っても、「大丈夫、そろそろやめるから」との返答。でも彼らは殊更名残惜しそうだ。まだ用意した道具の半分も見ていない。終電時間が過ぎてもなお、延々と続くので「いいよ、タクシーで帰るよ」と言ったのだが、「深夜料金が付くから高くなるよ」と、彼はあくまで親切である。なんだか気を使わせてかえって心苦しい…やっぱりさっさと地下鉄で帰ればよかったなぁ…ていうか、そもそも来なきゃよかったのか。

結局12時を少し回った時点でお開き。オトコたちの楽しみを奪ってしまったようでなんだか身につまされる。そして自分がゴーモンを受け続ける状況がいたたまれなかったのもまた事実である。まー、友達(だった人)に裏切られて沈んだ気持ちはなんとなく浮き上がりはしたけどさ。
ところで、この日の不幸は、「友達(だった人)に裏切られ事件」の前に既に二つあったのだ。つくづくついていない日であった。