カナダ
第3節 アメリカ人とカナダ人

カナダは寒い国…か?

「カナダ=寒い」という「常識」は、既に世界中の人々の頭に巣食っているようで、これからカナダに行くとか、今カナダにいるとかいう話になると、「あっち(そっち)は寒いだろうね」と、間違いなく言われてしまう。

しかし。

筆者は再3口を酸っぱくして知人達に言ってきたはずなのだ。
「バンクーバーはそんなに寒くないんだよ」と。

でも誰も聞いちゃいないのである。誰も彼も「ふ~ん」と1度はわかったように(生)返事をしながらも、次の機会にはそんな事聞いた事もなかったかのようにまた同じ事を言われてしまう。「カナダ=寒い」という図式があまりにも根深く人々の頭に入り込んでいるという事なのだろうか。

近々遊びに来る予定になっていた友人などは「ダウンジャケットを着て」「雪が降る場合に備えて足元も固めて」という準備をしていると言ってきた。スキー場へ行くんじゃないんだから…。

カナダは、確かに冬は寒い(所が多い)。緯度で言えば北海道より北になるのだから当然と言われそうだが、北米の西海岸沿いは、夏も冬も程良い気候で過ごし易い。この夏、アメリカとメキシコの国境まで行ったのだが、多少は暑いかと思いきや、バンクーバーと殆ど変わらず、かなり過ごしやすかった。少し内陸では同じ緯度でも無茶苦茶暑くなったり寒くなったりするようなので、恐らく海流の影響で、西海岸沿いは快適な気候になっているのではないかと思う。バンクーバーもその例に漏れず、夏は涼しい。そして冬は「冬」と呼んで差し支えないくらい普通に寒いが、平地では雪が降る事も少なく、関東以南太平洋岸平野部と同じくらいの気候だ。

また、カナダといえども、夏は何処もかしこも涼しい訳ではない。内陸平原部(ロッキー山脈より東)は、夏はかなり蒸し暑いそうだ。そういう土地に限って冬は猛烈に寒い。バンクーバーはカナダの中でも気候的にかなり恵まれた土地なのだ。

ところで、カナダ人の知人から聞いた話だが、その人が子供の頃、学校間交流のためにアメリカの児童が学校ぐるみで訊ねてきた事があったそうで、夏だというのに揃いも揃って冬物衣料に身を固めてきたという。子供だけならともかく、先生まで。カナダ人のよく言う冗談に、「アメリカの奴らは、カナダ人は氷河の中に住んでいると思ってるのさ」というのがあるが、これは単なる皮肉ではなく、事実なのだった…。

隣の国のアメリカ人でさえ(国外情報音痴なアメリカ人だからこそ?)、カナダの気候について誤解しているくらいだから、遠く離れた日本にいて、かつカナダに来る予定など取り敢えずはない人に、いくらそれは違うと諭しつけても、結局それは、その人にとって当面は無用の知識な訳で、記憶しておく必要はない。カナダの話題になる度に、同じ話を繰り返さなきゃならんのだろうと、まァ、半ば諦めている。