韓国
第2節 韓国フツーな観光案内

愛しのヘバラギ〜韓国菓子事情

唐突に全然違う地方の話だが、北米の菓子は不味い。そもそも菓子は嗜好品なのだから、美味くなければならないはずなのに、かの地の菓子類はことごとく不味い。今度こそ、と期待して美味そうに見えなくもないモノを物色しても、ものの見事に殆ど毎回裏切られる。ケーキなどのデザートも劇的に不味い。原色使いのデコレーションケーキは見かけからして殊更不味そうだ…。

どう不味いかというと、取り敢えず甘けりゃ何でも良いだろう、という大雑把な味付け…ならまだ良いのだが、中には半端じゃなく不味い物がある。美味しくない、のではなく実に不味い。それを現地の子供も大人も「うみゃ~」と言って心底美味そうにかぶり付いているから、ひょっとして自分の味覚の方が「間違って」いるのでは?と錯覚しかねない。

北米で受けた一番のカルチャーショックは、「不味い菓子が存在し、それを美味いと言って食べる人々が存在する」事であった(カナダ編参照。なお、フランス文化が色濃いカナダのケベック州ではこの限りではない)。

それに引き換え、韓国では何を食っても美味い。菓子類も多分に漏れずハズレがない。日韓両国に展開する頭に「ろ」の付く某菓子メーカーの商品は言わずもがな、どちらがオリジナルかは知る由もないが、日本のモノと実によく似た商品もある。有名どころでは「かっぱえびせん」や「きのこの山」。韓国映画によく登場する「チョコパイ」も人気が高い(※)。勿論韓国のオリジナル商品もあり、そのどれもが嗜好品として十分なレベルを保っている。

こと食に関して執着の強い彼らの事、食物全般が美味いのは当然と言えば当然の事かもしれない。なにせ、貧しい時代の朝の挨拶は「朝御飯食べた?」だったらしいから…。今現在でも昼の挨拶に「おなかすいた」というらしい。ドラマの中にも「ご飯食べた?」という台詞が無闇に多い。

意外な事だが、激辛風味の菓子は少ない気がする。食事でさんざん辛い物を摂っているから、菓子まで辛くする必要はないのかもしれない。

さて、数年振りに韓国を訪れた折、出迎えてくれた友人が、とある菓子の袋を差し出してこう言った。

「前に来た時、これを気に入っていたようだから買っておいたよ」

はて?そんな物あったかいな?

友人が差し出した黄色っぽいパッケージには小粒のチョコレートの絵が。折角覚えていてくれた友人には悪いが、う~む、全然覚えがない…。が、食べてみると、確かに好みの味ではある。と言うか、はっきり言ってむちゃ好みである。なのに食べた覚えがまるでないとは…。彼女、他の日本人の友人と取り違えていたんじゃぁ…。

商品名は「ヘバラギ」。ひまわりという意味だが、そのものズバリ、ひまわりの種にチョコレートをコーティングした物である。日本にもあって良さそうなものだが、そもそもひまわりの種を食べる習慣があまりないので市販しないのだろうか(何処ぞの百円ショップに売っている、という目撃情報はちらほら耳にした)。販売元は、日韓に展開する頭に「ろ」の付く某菓子メーカーだというのに。派手なCMナゾ打たなくても、地道にヒットしていくと思うのだがなァ…。その証拠に、土産として渡すと誰もが気に入って、もっと食いたいと騒ぐのだ。

そんな訳でこの菓子は筆者の定番韓国土産となっているのだが、案外見つけるのに苦労する。大手スーパーならほぼ間違いなくあるが、コンビニやキオスクにはあったりなかったり。スーパーでも、棚の下の方の目立たない場所にひっそり置いてあったりするので、探し回った挙句、店員さんに訊いてようやく発見した事もしばしば。以前、街中でどうしても見つけられず、更に諦めきれずに空港を探し回ったら、一箇所だけ販売している所があった。その場で買い占めたのは言うまでもない。

「ろ」の付く某菓子メーカーだけでなく、他の会社からも出ているようだが、取り敢えずパッケージの一例。

ひまわりの種の部分に無理矢理ヘバラギを押し込めたイラストがかなり不気味。2000Wと表示されているが、量販店で1600Wくらいで買える。韓国へ行く機会があったら是非お試しを。

※ チョコパイ

「おばあちゃんの家」「JSA」でわりと重要な小道具として登場。味は日本の物と全く同じ。が、韓国で売られているチョコパイのパッケージには、何故か「情」という漢字が印刷されており、裏面は同じデザインの英語バージョン。「情」の位置には何故か「It’s now!」と。はて?ガイジンのおニイちゃんに「この漢字、どういう意味?」と質問され、この不思議なモノに遭遇した次第。漢字の意味がわかったおニイちゃんも「はて?」という顔をしてげらげら笑っていた。