韓国
第2節 韓国フツーな観光案内

ツアーガイド気取りで韓国旅行

はてさて、単独マーケットツアーから4ヶ月置かず、「母と叔母のツアーガイド」をする事になった。叔母は数年前に何の目的もなく「取り敢えず」パスポートを取ったものの、1度も海外に行った事がなかったので、時間ができたらそのうち一緒に何処かへ行きましょうという話になっていた。また、テレビの旅番組が好きな母は、韓国食に魅了されており、筆者が1月に韓国「旅行?」から帰るや、「行きたいなァ」と度々匂わせるようになった。そんなこんなで3人で出掛ける事となったのだ。

韓国なら2泊3日ホテル付きツアーが3万円以下からあるが、夕方着午前発、その上行き帰りの日はお買い物ツアーに連れて行かれるらしいので、実質1日しか自由時間がない。ソウルだけでも見所は山のようにあるのに、これでは買い物だけで終わってしまいそうだ。延泊もできるが、追加料金はバカみたいに高い。従って、長く滞在するなら航空券だけ取って安宿に泊まった方が割安となる。韓国の素泊まり旅館は1部屋あたりの値段を徴収するため、複数で泊まるとかなり旅費を抑えられるのだ。

そんな訳で、「お客」の希望を訊いた上、こんな所へ行った。

  • キョンボックン(景福宮:李朝時代の王宮跡)と国立民族博物館
  • ロデオ・ストリート(アウトレットショップが立ち並ぶ通り)
  • ロッテ・ワールド(遊園地などの室内総合テーマパーク)
  • 民族村(古い民家を再現した郊外のテーマパーク)
  • スウォンファソン(水原華城、古い門と城壁)

う~む、如何にも1人では行かなさそうな所ばかりだ…。特にロッテ・ワールド…(母のたってのリクエスト)。行った事がない所が大半で、それぞれの場所で意外に面白い部分を発見できたので、まァ、良しとしよう。この中で一番のお薦めは、民族村である。庭や畑と共に忠実に民家が再現され、綺麗に整備された園内は、歩いているだけで楽しい。木陰が多く、靴を脱いで上がり込める東屋がたくさんある。また、ロッテ・ワールドの中にある巨大な模型の博物館も意外な穴場である。キョンボックンの模型もあるので、現地を訪れてから行くと面白いかも。

ところで、1人の時は特に必要を感じなかったのでタクシーには乗らなかったのだが、他の2人の体力を考えて、この時は結構利用した。元々運賃が安いので、近距離ならば複数で乗れば地下鉄料金と殆ど変わらないし、陽気な運転手と会話練習もでき、意外と楽しめた。

1人だと韓国人と間違われて道を訊かれる事が多々あったのだが、この時は始終きょろきょろし通しで日本語を発しつづけるオバさん2人と一緒にいたため、明らかに観光客風情で、そういう機会には恵まれなかった。その代わり、如何にも観光地といった所へ出掛けたため、写真を撮ってと何度か頼まれた(結局韓国人っぽく見えるらしい…。頼んできた方も外国人とわかって驚いていた)。お陰で写真を撮るという意味の「チクタ」という動詞が覚わり、自ら写真を撮って、と頼む事もできるようになったのだ!記念写真には興味がないので、自分1人ならこんな事絶対頼まないのだが。因みに、これはオバさんに大人気の韓国ドラマ、冬ソナ第1話に出てくる有名な台詞「ネガチゴッタ(私が戴いたわ!)」の中の言葉。「とる」の他に、唾をつける、確かなものにするという意味があるそうで、日本語の「とる」に通じるモノがあって面白い。

とまァ、集団旅行ならではの醍醐味があって筆者自身は結構楽しんでいたのだが、残念だったのは、あまり旅慣れていない叔母のノリが今ひとつだった事だ。何処へ行きたい、何がしたい、何が食べたい、と希望を訊いても、「わからん」という返事ばかり。従って、好奇心旺盛で遠慮がちながらも希望を述べ立てる母のリクエストに沿って動く事になったのだが、叔母は何処へ行ってもなんだかつまらなそうだった。

筆者自身も初めて行く場所が多かったので、行き先を探しながらウロウロウロウロ行ったり来たりする。1人きりの時には、これは楽しみの1つでもあるのだが、旅慣れないご老体には結構こたえた模様。また、ソウル市内は何処もかしこも人と車で溢れ返っており、騒々しい。聞こえてくる言葉は訳のわからない外国語。そして、安宿は決して立派な設備ではなく、疲れはなかなか癒されない。そんなこんなでかなり疲れたようだった。初めての海外は、無難にパックツアーにしておいた方が良かったのかもしれない。たくさんの場所を効率良く回り、何も考えずにタダついて行くだけでいいツアーは筆者自身には窮屈この上なく、一体どうしてあんな不自由でつまらん旅行を好む人がいるのか著しく謎だったのだが、こういう旅の方が肌に合う人もいるのだと思い知った次第である。

「オバさんの面倒を見るのはもうこりごりでしょう?」と2人は言っていたが、こりごりと思ったのは本人の方だったのかもしれない、と思うと、筆者は何も返す事ができなかった。