韓国語が上達…したのだろうか?2

二〇〇四年五月、母と叔母と共に韓国旅行に行く事が急に決まった。航空券の予約をしたのも実に一週間前。あまりにも時間がないので、旅行会社の人も「支払いは今すぐクレジットでお願いできますか!?」という焦りよう。

本当ならもう少し後になる予定だったのだが、色々あって予定が前倒しになってしまったのだ。今度は韓国語をじっくり勉強して行くべぇと意気込んでいたのに、突然の予定変更に泡を食ってしまう。

取り敢えず、四月から通いだした韓国語教室で買わされた教科書は読破寸前、基本的な用言の活用や助動詞、文法事項はなんとなく頭に入っている。が、問題は語彙だ。これを増やさない事には文章の作りようがない。覚える覚えないはともかく、一番簡単な教科書を全部読み返し、載っている全ての文を書き取り・音読し、注意深く聴く聴かないはともかく、付属の音声教材を一日中流しっぱなしにしておいた。
これでまァ、もの凄く限定的だが、ある程度の文章は何も見ずに組み立てる事ができるようになった。恐ろしいもので、こんな短期間でもちゃちゃっと作文ができてしまうほど、韓国語は日本語に近い言語なのだ。

西洋人学生がアジア人学生に比べて英語の上達が早いのは何も彼らが我々より極めて優秀という訳ではなく、母国語の言語の構造が似通っているからなのだ(でもフランス人は発音が酷い人が多いぞ)。多分韓国語学習者の中では日本人がダントツにデキるのではないか(発音はともかく)。

そんなこんなで、二週間足らずのやっつけ詰め込み学習だったにしろ、前回、前々回の「全然使えない」「殆ど使えない」よりは随分マシなレベルに到達した。なにしろタクシーに乗って運ちゃんと世間話すらできてしまったのだから(ただし、語学的低レベル会話)。敢えて言うなら「旅行に行って困らない事はない」と言った程度のレベルか…。

しかし、発音はやっぱり難しい。「日本語にない音」ではなく、「日本語と微妙に違う音」が多いので、振り仮名通りに適当に発音していては、まず通じない。「三つ」を「みっちゅ」とか言って「ぷぷっ」と笑われるだけで済む話ではないのだ。

文章になればなんとなく推測して貰えるのだが、タクシーで行き先のみを告げるのは、なかなかどうして、かえって難しいぞ。なにしろソウル市内に「仮名で書けば全く同じ」地名が結構あるのだから。

ハングル表記に忠実に一生懸命発音したつもりでも、「は?何だって?」と、本当にわからない様子。

「チョンガッまでお願いします。」

「え?何処?」

「チョンガッ。」

「何?」

「え~と、チョンガギョギエヨ~(チョンガッ駅ですよぉ)。」

「???」

仕方なく、紙に書かれたものを見せると、

「あぁ~、チョンガッ!」

すみません、アジョッシ、アタシにゃ同じに聞こえます…。

この地名、アルファベットで表記すると「jong-gak」となる。初声の「j」は「ch」に近い音だが、はっきり「ch」と発音すると、激音と呼ばれる別の音になってしまう。また、終声の「k」も喉の形だけ作って発音しない厄介な代物。駅という意味の「ヨッ(ク)」がくっつくと、有声音として現出する。こんな短い地名なのに、困難なポイントがいくつもあるのだ!泊まっていたのがこの付近なので、こんな場面は何度もあった(ならば修得できていそうなものだが)。そして、タクシーに乗りながら運ちゃん相手に発音練習…。

もひとつ、これは筆者の発音の不味さのせいばかりでもない珍事件があった。二十四時間営業のスーパー「Kim’s club」という所へ行ったのだが、この行き先を告げる時、筆者はつい英語チックに発音してしまった。

「う~ん、そんな所は知らない。電話番号わかる?」

はて?大きなスーパーだから、この近所を走っていて知らないはずはないのだが…。運ちゃんは申し訳なさそうにその場を離れようとしたのだが、三メートルほど走ってからバックで戻ってきて、

「ひょっとして、キムジュクロッの事か?」

きむじゅくろっ!

ど~りで、通じないはずだ!ハングル英語の規則に従えば、確かにキムジュクロッだ!ハングル英語マスターを気取るのは些か時期尚早だったようだ…。