類は友を呼ぶ

筆者がカナダに行った時、初めて訪れたのは、Kamloopsという田舎街だった。西海岸のカナダ人なら名前ぐらいは知っていようが、東側のカナダ人や隣国アメリカ人には、一体何処の話よそれは?と言われても仕方のないローカルな場所である。にもかかわらず、バンクーバーで同じ家をシェアしていたハウスメイトは筆者と入れ違いでその街に住んでいたというし、スペインの安宿でたまたま同室になった子が、カナダのワーキング・ホリデー帰りだと言うので、何処に住んでいたのか訊くと「Kamloops」。妙なところで微妙にポピュラーな場所なのである。

日本人に関して言えば、ESL専門の学校と、意外と留学生の多い四年制大学があるというのが微妙な人気の理由の一つではあるのだが。しかし、それらの数の上から言っても、バンクーバーやトロント在住経験者に会う機会の方が多くあるべきな気がする。「類は友を呼ぶ」というのは、実は自然科学的に確固たる因果関係あって故の法則なのだろうか?

そんな事はともかく。

先日仕事で同席した人と話していて、甥っ子がハーフなのだという話題が出てきた。へ~、お義兄さんのお国はどちら?と何気なく訪ねると、あろう事かカナダだという。「あれま、このアタシはカナダに住んでいた事があるんですよ!」と言うと、何処にいたの、とごく当たり前の質問が。バンクーバーとKamloopsにいた期間はほぼ同じくらいだが、バンクーバーなら誰でも知っているだろうから、取り敢えず、バンクーバーと言ってみた。ところが相手方は「バンクーバーって住みにくい街だよね」と、にべもない様子。世界の住み易い都市ランキングで、確かバンクーバーはかなり上位に食い込んでいたはずなのだが、ま、人によって感じ方は色々であろう。

ところが。

「バンクーバーから車で数時間の所にKamloopsって街があるんだけど知らない?」と、これは筆者が言ったのではない。「そこがお義兄ちゃんの実家なんだわ。」

なんという事!

「Kamloopsの飛行場に、地面に飛行機が突き刺さっているモニュメントがある」という話でひとしきり盛り上がり、その場は収束したのだが…。

仕事が終わった後、関係者の打ち上げパーティーがあり、何故だかそこに見知らぬ外人さんが来ていた。まさか話題になったその日に本人が現れるとは思っていなかったのだが、ぬわんと件のカナダ人だった。

「えええっ?ひょっとしてKamloops出身の人?ワワワ、ワタクシもKamloopsにいたのでござるよ!」

相手もまさかKamloopsにいた事のある日本人にこんな場所で出会う事になろうとは思ってもいなかったであろう。いやはや。聞けば、彼はカナダには四年も帰っていないらしい。クリスマスなどの家族の集いを大事にするカナダ人には珍しい。母親は角を立てて怒っているそうだ。なんでも、一旦カナダに帰ったものの、仕事がないので日本に戻ったのだという。確かに、ワーキング・ホリデーの日本人がかの地で仕事を探すのは至難の業だったようだが。地元民ですら仕事がないというならば、なおさらだろう。

彼はこちらではコンピューターエンジニアとして働いている他、ラジオパーソナリティもやっているらしい。「僕の声、一時間に一度くらい流れるよ」と、ジングル一節をばばばっと喋ってみせる。たまに筆者も周波数を合わせる局なので、声から節回しから、聴き覚えありまくり。

彼が日本にやってきたのは大分昔だが、筆者と同じく、ワーキングホリデー・ビザで来たのだという。ついでに言うと、その日一緒に仕事をしたオーストラリア人の女性も、元々ワーキングホリデー・ビザで日本に来たのだという事がわかった。別々の国のワーホリ経験者三人が一同に会してしまった訳だ。

「世間は狭いね」と、カナダ人の彼は流暢な日本語でそう言った。