カナダ人inジャスコ

来日中の両親と鳥羽のリゾートホテルに遊びに来ていたカナダ人の友人R君(東京在住)を訪ねて行った時の事。R君の家族を乗せてホテルから伊勢神宮まで車で出掛ける途中、通り道にジャスコがあったので、そこで昼食を買う事を提案したら、なんだかカナダ人の一部が異様にエキサイトし始めた。ちょっと妙に思ったものの、旅のエキサイト感がそのまま現れただけだろう、くらいに思っていた。ところが、そうではなかった。

各自好きな物を昼食用に買い込んだ後、暫く店内を見て回る事になった。外国のマーケット巡りは確かに面白い。また、ツウな友人には、地元民が普段利用する店で、自分の国にはありそでなさそな物を買っていった方が余程喜ばれるのだ。

R君はガールフレンドのKさんと、筆者はR君の両親と、それぞれ一緒に行動したのだが、R君のママの暴走ぶりったら、それはもう、息子も呆れ顔の代物だった。まず、店内をぐるりと見渡しての彼女の第一声は、

「こんなステキなスーパーは、日本に来てから初めてだわ!」

確かにジャスコは大型スーパーだが、所詮地方都市のそう新しくもない支店だから、さほど大きい訳でも品揃えが目新しい訳でもない。まして、カナダの大型スーパーに比べたら鼻糞のようなものである。

ママだけではない、日本に住んで半年のR君まで「ジャスコに入るのが僕の夢だったんだ!」と言うのだ。なんだかやっぱり妙だぞ、と思ったら、なんと、東京二十三区内にはこういった大型スーパーはあまりないという事なのだった。

そんな事はともかく、まずは練り物、豆腐などのコーナーでママは足を止める。「これは何かしら?」と、厚揚げを取り上げる。揚げた豆腐、などといった説明をすると、「これをRに買ってあげる事にするわ!」と、買い物かごに放り込む。東京まで要冷蔵の厚揚げを持って帰る?なんて事を一応言ってはみたが、聞いていやしない。

続いて、彼女はカレールウを欲しがった。Kさんがカナダに滞在中、カレーライスを作った事があるらしく、彼らのお気に入りレシピになっているようだ。「辛いのはどれかしら?」「これとこれは味が違う?」「どちらが美味しいと思う?」などなど、矢継ぎ早に質問してくるものの、筆者の答えなどあまり関係なく、彼女はぼんぼんとカレールウの箱を放り込む。その数は十箱は下らない。あの子へのお土産でしょ、それからあの子でしょ、と、どうもカナダへ持って帰るつもりのようだった。その前に、それを東京まで持って帰るんですか?「東京でも買えるから」と言っても、やっぱり聞いちゃいない。東京どころか、ともすればカナダでも買えるんだけど…。

次はポッキーである。これも、ありとあらゆる種類のポッキーをばかばかカゴに放り込む。その上、「他にも何かお勧めのお菓子はあるかしら?」

まだ買うんですか?

再びR君達と合流した時、買い物かご二つ分、食料品が満載になっていた。「そんなの東京でも買えるのに…」と、R君も呆れ顔で呟いた。

そして、とどめはフードコートのタコ焼き屋である。なんだか珍しい形状の食べ物なので、彼女は足を止める。しかし、問題が一つあって、つまり、彼女はタコが嫌いなのだ。タコが入っているから、と言っても、「いっぱい入ってるの?一個だけ?じゃあそれは穿り出してR(←タコ好き)にあげれば良いから」と、興味津々。結局タコ焼きは買わなかったものの、バイタリティ溢れる彼女のショッピングに付き合うのはかなり面白い経験だった。