刃物の問題

近頃、日本の空港でのセキュリティチェックが厳しくなった。ナニゆえ「日本の空港」がとりわけ厳しいことがわかったかと言うと、日本の空港でハネられたのと同じ物品を手荷物の中に入れたまま、外国の空港のセキュリティは素通りできたからである。

まずはクアラ・ルンプール経由でストックホルムへ。クアラ・ルンプールでは乗り継ぎ便待ちのために2泊することになっており、ここにいる間に好物のトロピカルフルーツを存分に食らおうと、スプーン・フォーク付きのアーミーナイフ(スプーンやフォーク付きのものは殆ど見かけないが…)を持っていた。預け入れ手荷物の方へ入れても良かったのだが、出発前のどさくさで、機内持ち込みの方に入っていたのだ。当然、セキュリティで引っかかる。「何か刃物はありませんかね?」と言われたので、まずは剃刀なぞを示して見せたのだが、コレは別に問題ないという。

え?剃刀OK?

いいの?

コレで十分ハイジャックも出来るよ???

筆者の父がセキュリティチェックを受けた時、殆ど何も切れないようなキーホルダーのナイフが引っかかったことがあるという。その理由は「コレで配線を切ったり出来てしまうから」(剃刀でも出来ると思う)客室の何処に配線が露出していますか?トイレの天井を突き破って配電室や荷物室に忍び込みますか?ジョディ・フォスターみたいに?(映画「フライト・プラン」参照)なんつーか、厳しい割りには杓子定規なだけで、本来の「セキュリティ」の定義から外れているような気も…。件のアーミーナイフも、鉛の箱に入れて持っていたりしたらバレないのだろうか?結局、武器を持ち込む人はなんとしてでも持ち込んでしまうような気がする。善良な市民はいい迷惑だ。

で、アーミーナイフはチェックインカウンターから預ける事になった。以前、確か「機長預かり」という方法で、その場で書類を書いて預けたことがあったので、そう申し述べると、「国際線ではやっていません。チェックインカウンターに戻ってください」と言われる。ハテ?確かあの時はスイスかアメリカかドイツに飛んだ時だったはずだが。「ここの空港ではないのでは?」とおっしゃるが、筆者が出発するのはいつもココの空港だよ。まぁ、数年前の話なので、旧空港の時代だが。夢でも見たのだろうか?なんだかんだで外に追っ払われる。

チェックインカウンターで新たにクレームタグを発行してもらい、ナイフ一本をその体積にしては巨大すぎる紙袋に入れて預かってもらうことと相成った。

で。

クアラ・ルンプールの空港では、コレを引き取るのを見事に忘れてしまう…。忘れるよ、フツー、こんな小さい荷物…気付いたのは、そう、街中の市場でトロピカルフルーツを買おうとした時。仕方ないのでフードコートでスプーンをお借りして食らい付く。2日後、乗り継ぎ便に乗る前にLOST&FOUNDを訪ねると、きちんと保管されていた。ありがたや。この時点で既に大きな荷物はチェックイン済みだったので、再会したこのナイフは、どさくさに紛れて機内に持ち込んでしまった。ていうか、セキュリティチェックに引っかからなかった。

不思議だ。

ストックホルムから帰りの便に乗る時もやはりひっかからなかった。

不思議だー…。

さて、慌しい筆者の旅程は、再びマレーシア経由で日本に帰国後、即、釜山行きの便に乗り継ぐと言うもの。途中、航空機遅延というハプニングもあり、慌し過ぎて、機内持ち込み用の荷物の中身も殆どそのまま。「こういうものは預ける方の荷物に入れてくださいねー」と、再びハネられる。ストックホルムもクアラルンプールも全然ノープロブレムだったもんだからつい油断していました…

再びチェックインカウンターに追いやられ、今度は前の紙袋の3倍くらいの大きさにハコに入れていただいた。そして、またもや見事に拾い上げるのを忘れる…。忘れるよ、フツー、こんな小さい荷物…。

気付いたのは、そう、街中のスーパーでマクワウリを買おうとした時。が、ナイフくらいホテルで借りられるだろう、と思い、マクワウリを買っていく。ルームサービスで、果物を切るのにナイフを借りたい、と頼むと、しばらくしてからチャイムが鳴る。ドアを開けると、なんと、巨大なハサミを持ったおにいさんがっ!

確かに、ココは麺や肉をハサミで切る国ですが、

果物まで???

そうじゃなくて、ナイフをお願いしたんだけど、と言うと、おにいさん、ちょっと待ってて、と一旦戻っていく。再びチャイムが鳴ったので出てみると。

今度は小さなカッターナイフを携えたおにいさんがっ!!!

この国では文房具で果物を切るんですか!!!

そうじゃなくて、料理用のナイフだってば!と言うと、おにいさん、引っ込んでからまた戻ってくる。その手には…食事用のナイフが握られていた…。

コレでナニを切れと言うのだ?

ステーキですか?

そうじゃなくて!

コレを切りたいんだけど!もっとシャープなナイフを貸してよ!と、マクワウリを見せると、何故かもう1人おにいさんが現れ、鋭利な刃物は貸し出せない、というようなことを身振り手振りで表す。で、コレでも切れるよ、とでも言うように、筆者の手からマクワウリを奪い取り、廊下に突っ立ったまま、洗ったかどうかわからないような手を使い、その食事用ナイフで皮を剥いて見せようとする!!!!!(無謀)

あぁぁぁぁぁ!!!!!!もういいから!コレでいいから!

ていうか、こんなところで他人の食物にベタベタ触らないでください!!!!!

筆者はマクワウリとナイフを奪い返し、彼らを追い払った。皮を綺麗に剥くのは無理にしても、タテにずばずば切り裂くだけならこのナイフでも何とかなる。かなり食べにくかったけどね…

で、帰り、釜山の空港で。

ターンテーブルから引き上げるのはいつも忘れるのに、回収するのは何故か忘れない。まず、インフォメーションカウンターで引き取るのを忘れた荷物を探している、と告げると、到着ゲートの方を指してあそこに入りなさい、と言われる。あそこって、進入禁止では?と訊ねても、おねえさん、「大丈夫、入れるわ」と言い張る。半信半疑でゲートに入っていこうとすると、やはり職員に咎められる。ホラね…。

「あそこのネェさんがここに入って行けと言った」と話しても、ココのオジさんは「進入禁止」の一点張り。航空会社のサービスカウンターへ行け、という。そのサービスカウンターは到着ゲートの反対側の端だ。これは…タライ回しと言うヤツですか?

サービスカウンターで尋ねると、オバさんがどこぞへデンワしてくれ、チェックインカウンターの端っこを差して、あそこの奥にある事務所を訪ねて行け、と言う。あんなビミョーな位置に一般旅客が入って行けるのですか?また何か言い咎められそう…。が、一応、この事務所が最終目的地ではあった。

ところが。

対応してくれた職員に、クレームタグを見せるも、おにいさん、ろくにその番号をチェックもせず、忘れ物箱を覗いて「ありません」と言ってのける。ないってことはないだろう。だとしたら、誰かが持って行ってしまったと言うことか?「そうかもしれませんね」と、おにいさんは悲しそうに答える。

「どこか他に忘れ物を預かる場所があるんじゃないですか?」

「忘れ物はここに全部届くことになっています」

「消えてなくなる」ことがにわかに信じられない筆者は、なおもしつこく食い下がり続けたので、おにいさん、「それは高価なものですか?」と訊いて来た。イェ、決してそうではありませんが。タダ、回収できるハズのものを回収せずに置いて無駄を発生させるという事が主義に反するというだけの話なのだ。ヒマ人と言われそうだが…。

するとおにいさん、事務所の中に筆者を招きいれ、忘れ物箱を見るように促す。

最初からそうしてくださいよ。

案の定、ハコの中にはしっかり筆者の忘れ物が存在していた。クレームタグの番号もしっかり符合する。お兄さん、セキュリティに引っかかるようなナイフと言うからには巨大なサバイバルナイフに違いないと思い込んでいたそうだ(思い込みで仕事をしないでくれ。何のためのクレームタグだよ…)。

きっと、韓国でもこのアーミーナイフと共にセキュリティをスルーできるに違いない…とは思ったものの、まだチェックイン前だったので、預け入れ手荷物の方に放り込んでおいた。

初めから終わりまで、小さなナイフに振り回されっぱなしの1ヶ月だったのだ。